えどわーど

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えどわーどさんの日記

(Web全体に公開)

2024年
01月08日
18:36

33年前の秀行・李昌鎬論争

柳時薫九段のYouTubeで面白い動画が上がっていたので紹介します。



当時16歳にして世界戦優勝を果たしていた李昌鎬(イチャンホ)さんを20歳頃の柳九段が通訳として秀行先生(当時65歳頃)の自宅に連れて行って碁盤で第2回アジアテレビ杯の銭宇平(黒)と李昌鎬(白)の碁を検討したときの話です。

(1図:局面図)
実戦進行。
白8、10のツケオサエが李さんが好んで用いたツケオサエ定石。このように地に辛く堅実な序盤から神算と呼ばれた正確無比なヨセで世界を制覇して来ました。
白14のハサミは当時流行っていた手法のようです。

(2図:課題図)
2図は黒のaツギが秀行先生が良くないとしてカケツギを示してできた変化図です。
李さんは白2のハスカイノゾキを示し、秀行さんは黒3の押し。李さんは白4のナラビで「次に切りますよ」という手を示しました。
秀行さんは黒5のトビを示し、「これで黒も打てるだろう。」と言ったそうです。
柳時薫さんが李さんに通訳して伝えたところ、「白6と切られては黒は投了ではないですか?」と言ったそうです。
柳さんはこれをそのままストレートに秀行さんに伝えるのが憚れたみたいで、冷や汗をかいたと述懐しています。
どのように伝えたのでしょうか(笑)

(3図:解析図)
現代ではAI囲碁ソフトで評価値がすぐ出るのでどちらの意見が正しかったのか、素人でもすぐわかる時代になりました。
秀行さんの意見が正しかったようです。黒2子は取られていますがダメが3つも空いているので活力が残っており、すぐにでも星下のツケがうるさい。

他にも似たような話があれば柳さんに取り上げて欲しいものです。

https://gokifu.net/t2.php?s=2341704706560293

コメント

2024年
01月08日
18:39

秀行先生の弟子の三村智保九段も柳時薫九段の動画を取り上げて紹介していました。

2024年
01月08日
19:42

2: 江場

藤沢秀行は感覚を絶賛されている棋士の一人ですが、その感覚とは何でしょうね?
棋士に、ある局面の次の一手を尋ねるとすぐ候補手を示してくれますが、それは囲碁AIの示す次の一手とほとんど変わりません
やはり感覚=経験でしょうか? それとも才能?

この動画のように棋士の中でも感覚の違いがあります。その違いは才能になるのかな?

2024年
01月08日
20:52

芸術品でも本物を見せられ続けた人は本物を見る目が養われて芸術品の良し悪しが分かるようになると言います。
才能というより経験だと思います。
昔は良い師匠、良いお手本となる棋士、良いライバルに恵まれた人が強烈な努力をした結果、一流と呼ばれる棋士になったと思います。
現在では日本国内のみならず中韓にいる綺羅星の如くの一流棋士に加え、囲碁AIによる知見など、信じられないほど環境に恵まれた状況になりました。
現代に生きる囲碁人はプロもアマも幸せだと思います。

2024年
01月08日
21:19

4: 江場

そうですね
私の若い頃、というより通信(インターネット)の無い時代はプロの棋譜を手に入れるには大変な努力が必要でした
努力しなければ新聞や雑誌に掲載される僅かな棋譜しか手に入りません
そうして手に入れた棋譜を並べて隅から隅までその手の意味を理解(しようと)するかどうかで棋力が支配される状態でしたが、おっしゃるとおり当時と比べると現在は恵まれているのでハングリー精神が足りないように思います。
もっとも、いつの時代でも棋力を上げようとすれば強烈な努力が必要なのでしょうけど。
つい昔話で失礼しました

2024年
01月09日
02:38

江場さん

秀行先生は碁のことを四六時中考えるあまりに精神が持たなくて、酒やギャンブル、女にのめり込んで多額の借金を抱えるなど破滅型の人生を歩みましたが、奥さんのモトさんの尽力もあって数度のガンも克服して67歳で王座のタイトルを取るなど超人的な活躍をしました。
日本国内のみならず中韓の後進を育成した実績も素晴らしいと思います。
若い頃は異常感覚と呼ばれていましたが、いつしか時代が追いついて秀行先生の感覚は素晴らしいと日本国内はもとより中韓の棋士からも賞賛されるようになりました。

2024年
01月09日
12:45

6: 江場

秀行の著書「野垂れ死に」に秀行が若い者たちを育成した秀行塾、さらに韓国・中国に渡って両国の棋士たちを育成した話があります
秀行塾について「秀行は何を考えてる。強くした相手に負けたら損するじゃないか」と言われた
韓国・中国が強くなって日本が抜かれた頃「秀行は韓国や中国を一生懸命強くしてそれで嬉しいのか」という声が聞かれたと

真に囲碁が好きな人だったということですね
この秀行でも「自分には生涯碁が分からない」と書いています
将来AIによって囲碁が完全解析されたとき、秀行は喜ぶでしょうか悲しむでしょうか